さようなら、初めまして。
「取り敢えず、外見からって、友達に見せて吟味してもらって?」

え?

「あ、違う、違います。そんな、吟味とか、そんなつもりじゃなくて、ただ…」

あーもう。完全に誤解された。
ジンさんてこんな人なの、つき合って欲しいって言われた、どうしたらいい?って…聞く為だと思われた。違うのにー。あ゛ー…。馬鹿、私。

「解ってるよ、撮ろう?携帯は?それともカメラ?」

…。解ってるって。それ…違います…違いますから。…はぁ。
聞かれたから…携帯を取り出した。

「貸して?」

「え?は、い」

受け取るとこっちの席に移動してきて隣に座った。

「…あ」

「ん?二人一緒じゃないと証拠にならないだろ?俺一人を撮ったら、誰かを適当に撮ったんじゃないのってね。笑う?おすまし?どれがいい?」

「え?…あっ」

答えを待たず、顔を寄せられ、あっという間に撮られてしまった。

「フ、はい、こんな感じ。いい?」

満面の笑みとまではいかなくても、余裕のある笑った顔のジンさんとジンさんを見てる私の…まんま素の横顔だ。

「…はい、…いいです」

あ、いいですって言い方、どうだろう。でも、ジンさんが解るように撮れていれば今はいい。…これ、アキちゃんに見せる事ができる。

「もう一枚…」

…え?……カシャ…。

「あっ、の…」

…え…?い、ま…。え。

「…出ようか。はい、携帯」

「あ、は、い…」

俯く私の手を引いた。携帯を返し、伝票を持ったジンさんは素早く会計を済ませた。店を出た。
もう一枚の写真。それは、私の頬にジンさんの唇が一瞬触れた写真だった。

黙って手を繋いだまま歩いた。何が起こったのか、何だか解らないままドキドキしていた。何か…声を出して話すなんて出来なかった。気がついたら部屋の前に居た。

「…じゃあ、おやすみ」

触れ合って熱くなっていた手は離された。

「……あ、はい。あ、あ、の、……はい、…おやすみなさい」

「…今度は日曜。来るから、…7時に」

「あ、は、い」

……あ、な、に…。何じゃない、のよ。……。何か、もっとちゃんと話さなきゃ、変だよね。どうなったの?私…相変わらず気のない返事しかしてない。…あ、また…奢ってもらっちゃったんだ…。
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