さようなら、初めまして。
「…離れろ。遅くなってごめん、アイ」

私と男の間に割って入った。腕を掴んだ

「あ、痛。お前…。はぁ…またかよ、何だよ、ぁあ゛?」

「ふぅ……はぁ、しんど…。そっちこそ…なんだ。毎回…。いい加減にしろ。二度と声掛けんな。…触るな。解ったか、あ゙?」

「チッ。解りましたよっ!」

手を放すと人に紛れるように居なくなった。

「大丈夫?間に合った?……来てくれたんだ、アイち…」

「ジンさん…」

私…。

「おっと。大丈夫か?…あいつ、また…恐かっただろ」

「…ぁ、は、い」

また、あの男が居なくなった途端、力が抜けた。

「大丈夫だ。もう居ない」

抱き留められていた。力強い…あ、ぁぁ、この匂い…。お日様の匂い…。

「…あの、ごめんなさい。あ」

慌てて離された。

「ごめん、あっ、と…どこか入る?ご飯は?お茶でもする?メールくれたタイミングくらいでアイツが現れた?だったら電話してくれれば良かったのに」

「…ジンさん…」

「あ、ん?」

「ごめんなさい…私、ごめんなさい…」

「ん?何が」

「だって、私…」

こんなに…親切にしてもらう資格なんてないのに。

「んー、嫌じゃなかったら、どっか入ろう?勿論、嫌じゃなかったらだけど」

「嫌なんて…」

…グー。

「あ゙。ハハ、俺、腹減ってて…。どう?御飯。て、無理か…だよな」

「夕飯の時間ですよね。あ、私に奢らせてください。それだったら行きます」

「…清算?」

…。

「…そうではありません。お礼です。お礼お礼って言うばっかりで…溜ったままのお礼がしたいです」

「ま、あ。じゃ、あ、オムバーグ、そうだ、オムバーグ食べに行こう」

…あ。謝って、仲直り…しようと思って、結果最後になった果たされなかった約束の時も、オムバーグを悠人と食べることになっていた。…洋食亭、結局悠人は来なかった。また私は…こんな時も悠人との事を思い出していた。

「…はい」

でもジンさんは違う、居る…ジンさんとは、今からちゃんと食べられる…。
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