さようなら、初めまして。
「俺は…諦めが悪くて…。ずっと来てたよ、毎日。7時には居た。…しつこいだろ…さよならだよなって言っておきながら。…ごめん、気持ち悪いだろ」

首を振った。

「そんな事…」

「まあ、勝手に待つのは勝手だもんな」

「…そんな…」

…。

「…出ようか」

…あ。まだ…。でも、仕方ない。

「…はい」

「こんな…雰囲気を悪くさせるつもりじゃなかったんだけど…」

レジに行った。

「あ、私が」

「いや、俺が誘った。…晩御飯につき合って貰ったんだ、俺が払う」

「…でも」

「…そんなに清算したい?…俺との事」

「…違う。それは違います」

そんな意味で奢りたいんじゃない…。

「はぁ、ごめん。何を話しても、何だかトゲがあるよな、ごめん。とにかく、ここは俺が」

話しながら代金を支払い、頷きながらもうお釣りを受け取ってしまっていた。

「すみません。ではごちそうになります」

…はぁ、どうしてこんな風に…。ケンカみたいに…。あ。

「あの」

「ん?」

あ…。私…。また会えますかって、言いそうだった。

「…何でもないです、ごめんなさい」


カランコロン。外に出た。

「敬語に…謝ってばっかりにさせてしまったな」

「え?」

「すっかり知らない人みたいだと思って。他人行儀?まあ、元々他人だけど」

あぁ。…。

「ごめんなさい」

「また、だな。…この後で……居なくなったりしないから、俺。…会わないとしても、居るから俺。存在してる、多分。…心配になったんだろ?…さっき、言い掛けてやめた言葉。そうだろ?
俺は、突然消えたりしない」
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