さようなら、初めまして。
「…嫌じゃないなら」

「……え」

「俺の事、嫌じゃなくて、…迷ってるくらいなら、連れて行く」

「え?な、に…」

「時間がないんだ、俺。だから、話…俺の部屋で。
込み入った、もしかしたら…アイちゃんの話は、泣いてしまうような話じゃないか。人の目を気にしなくて済む。だから、俺の部屋で聞くよ。無理?駄目かな」

…。

「でも、私…」

「解ってる…。好きとか、そんな事、言えないって。だよな?
だから、さっきは、それなら聞く意味ないって俺も冷たく言ってしまった。…ごめん」

「いいえ、言われた通りだと思います…」

何でもないなら、聞かされる意味もない、そんな話だ。

「誰が一番だとか、そんな…順位の話じゃない。ただ、…ちょっとでも居て楽しいなら、つき合ってみないか…俺と」

…。

「…はあぁぁ、駄目か…」

…。

「…生きているか、…死んでるのか、それが解ればいいのか。
名前は、下の名前しか知らないのか?」

え?

「いいえ。悠人は…、光永悠人。です。それしか、悠人の事は知りません…」

それしかまだ知らなかった。

「年齢も?」

「…はい。何もかも。聞いてなかった。可笑しいかも知れませんが、まだ、…そんな事より、会って、楽しくて…。何もかも、後回しになってたんです…」

馬鹿みたいだけど、気にならなかった。まさに、恋は盲目という、まだその状態だったんだと思う…。

「だいたい、自分と同じくらい?と言っても解んないか…。見た目が若かったり、上に見えたり下に見えたり、あるからな…。
住んでるところも知らない?」

首を振って頷いた。

「だよな。仕事も、だよな?」

「…はい。何も…」

「んー、ここら辺に住んでたっぽい?」

「そんなに遠くはないかもって感じくらいしか…ごめんなさい。そうじゃなかったかもしれない。本当に何も、まだ知らないでいたから…」

「解ってる。何を聞いても解らないってことは解ってる。一応確認してみた。何か気づいていて忘れてる事があるかもって。
……余程楽しかったんだな、…一緒に居るだけで良かった…そんな時だった…」

「……はい」

…。
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