さようなら、初めまして。
「はぁ。もう駄目かな…。やっぱり期待しても奇跡は起きないものね…」

「んー、まだ解んないって。よく見てようよ」

「ごめんね、アキちゃん」

ヒールを壊した“現場”に来ていた。

「ううん。こんな人通りのある場所でも、遅くなって一人で居たら、何があるか解らないじゃん。それに、私も会ってみたいし、その救世主さんに。だから、ほとんど興味本位?フフ」

「アキちゃん…。有り難う、つき合ってくれて」

「でもさー、会った時と同じ曜日、同じ時間に来てみようって。それで会えたら、なんか、ロマンチックじゃない?」

「ロマンチックかどうか…。でも、それしか手段が無いって言うか…」

本当は翌日直ぐが良かったかも知れないけど。またここに来るのか、聞く間もなかったし、積極的に聞こうとしてなかったから。どちらかと言えば、敬遠していたのだから。

「そうだよね。なんにも聞いてないんだもんね。職場の先輩みたいな人が、ジンて呼ぶのを聞いただけでしょ?それで会うのは難しいよね。会えたら絶対運命感じちゃう、運命的な奇跡よ。あー、何だかワクワクしちゃう。あっちの方は私が見てるよって、言いたいけど、顔がね。解んないから、お手上げ?フフフ」

「…うん。ごめんね。上手く言えなくて」

「逢生は似顔絵が抜群に上手いって訳じゃないし、口で説明されても、今一だし」

「…ごめんね」

「いいのいいの。でも顔が良さそうってくらいは解ったから。それらしい人が遠くに見えたら直ぐ言って?私のこの、俊足で追い掛けるから」

自称“自慢の足”をパンッと叩いて見せた。

「うん。でもそれ昔の話でしょ?大丈夫?最近、運動してないって言ってたし、…体重、ちょっと増えたって」

「シャラップ!…そこは気持ちで追うから大丈夫なの。最後の手段は大声で呼び止めるから。
ジ~ン!待って~!て感じ?」

人差し指を立てて強く否定された。その後は身振り手振り、まるで一人芝居だ。面白い。

「ちょっと、フフフ、アキちゃん声…、大きいから…。みんな見てる…」

地声から大きいのも"自慢"だ。

「あ゙、ごめん…みんな振り向いちゃったね。すみませ~ん。なんでもないでーす。お騒がせしました~」

何事って、キョロキョロしてる人が居た。アキちゃんと一緒の時だったら、ヒールを突っ込んでも裸足でも、平気だっただろう。…フフ。

「あ、もう、アキちゃんたら…フフフ。…んー、今日はもう駄目かな…」

会った時間より時間もかなり過ぎた。あの時は偶々仕事で居ただけだろうしな…。

「んー、こういうのって、切り上げるタイミングが難しくない?帰ったあと通ってたらって思うとね、中々帰れなくない?」

「…うん。そうだね。でも随分粘ったし、これ以上は遅くなるし。もう仕事をしてる時間でもないでしょ?」

仕事も何だか解らないし…。

「じゃあ帰る?後悔しない?私はいいよ、まだ」

「ううん。かなり待ったし。ここに居たのは先週だけだったかも知れない。解らないから仕方ないよ。…運、もあるでしょ?また曜日に拘らず来てみる…」

「んー、じゃあ、今日は…解散?」

「うん。有り難う、そうしよ?」

「いいの、いつでもつき合うから。特に遅くまで待ってみるなら、必ず声かけて?危ないからね」

「うん、有り難う」

「んー、じゃあね」

「うん、じゃあね」

「あ、ねえ、私が帰った後に会っちゃったら直ぐ連絡してよ?」

「解った、する。フフ」

手を振り続けて、アキちゃんが帰って行くのを見送った。…はぁ。アキちゃんは職場とは関係ない友人。私を見守ってくれる優し過ぎる友人…。

「はぁ…会えると思ったのにな…。そんなに都合よく、奇跡は起きないか…」

甘いよね。やっぱり曜日とかに拘らず、直ぐ来た方が良かったのかも知れない。もう、これ以上日が空いちゃうと無理かも。

「ねえ何?奇跡って?」
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