さようなら、初めまして。
「え…」

あ、…違う人だ、誰…。

「さっきまでずっと居たの友達?もう帰ったの?じゃあねって、言ってたよね」

…あ。アキちゃんとの話、聞いてたの?……こういうの、困る。苦手。

「ねえ、もうこの後、用って無いの?」

…アキちゃん。アキちゃんなら上手くかわしてくれるかも知れないのに。

「ねえ、聞こえてる?」

何だか恐い…助けて。

「なあ」

一緒にあっちに行ってたら良かった。

「…約束…」

「な、に」

あっ。顎に手が触れた。や、体がガクガクし始めた。

「…約束、してるんです。もう…来るんです、その人。…だから」

…嫌、どこかに行って…。

「だから、何。そんなの嘘だろ?フ…下手だなぁ」

嘘よ。だって、前に立たれたら逃げられない。顔を捻った。バッグの紐をギュッと握った。

「退いてください…」

精一杯睨み返した。

「あ、それ威嚇のつもり?可愛い~。全然恐くないなぁ。なあ、いいだろ?一人だって解ってんだから。後は帰るだけだって。いいじゃん、つきあってよ、行こう。な?」

嫌。腕を握られた。触らないで。

「ちょっとだけだからさ」

ちょっとだけって何…。

「離して…大きな声出しますよ」

「どうぞ?」

あ、この人は知ってる。こんな風になってから大きな声は出せないって。出しますよって言ったら、教えてしまったも同然。騒ごうものなら簡単に口を塞がれてしまうだけ。はぁ…馬鹿だ、私。…恐い。誰か…。アキちゃん…。

「助け…」「痛っ!」

「ごめんごめん。はぁ…、随分、はぁ、待たせたな」

え…あ。

「アタ、痛、…痛い。んだよ、あんた。邪魔すんなよ」

腕を掴んで捻っていた。

「勝手に声かけてんじゃねえよ…。触んなよ。俺?解んない?俺はこの人の待ち人。な?」

あ、あ。

「ジ、ン…さ、ん」

「チッ、んだよ。もっとハッキリ断れよな。あ~あ。すみませんでしたっ」

こういう人は逃げ足が速い。もう居なくなった。

「あ…」

「大丈夫だったか?」

「あ、あ…」

「ん?」

大丈夫なんかじゃない。…はぁぁぁ。助かった…。
< 6 / 91 >

この作品をシェア

pagetop