さようなら、初めまして。
「…ジンさん」

どうしてここに。

「ごめん」

え?何が…ごめん…なの?
ジンさんも…悠人と同じなの?

「大丈夫か?」

「え?」

「…涙…泣いてるだろ?」

…あ。…あぁ…私は泣いてるんだ。

「車で来てる。取り敢えず、出て、部屋に行こう」

「あ、私…。でも…」

「いいから。話があるんだ」

「え、は、い」


外に停められていた車に乗せられた。

「行くのは私の部屋だ」

「は、い…」

気のない返事をした。放心していた。車を出したら隣から手が伸びてきた。膝の上で握っていた手を取られた。握られた。

「大丈夫か?あ、メール、返さなくてごめん。無視をした訳ではない。いや、無視した事になるな…すまない。ちょっと、焦らしたんだ」

あ。……アキちゃん。

「沢山質問を有り難う。…嬉しかった。今、それどころではないな。本当なんだね」

「…悠人は生きていました。さっきまで会ってました。偶然て、恐いですね。いきなり会ってしまうと……この言い方はおかしいですね。連絡が欲しいとか会えたらって思ってるのに。いざとなると、何の心の準備もなくて…本当に…思いもしない時に出くわすモノなんですね。びっくりしました。はぁぁ。幽霊でもなく、元気でした。ちゃんと生きてました。…自分の中で勝手に死なせて、それを理由に忘れようってしてて、やっぱり酷い思い込みですよね。
…終わりました」

「逢生…」

車は急に路肩に停められた。

「逢生…」

肩に腕を回されベルトを外して抱きしめられた。あ。

「逢生ちゃん。聞いて欲しいんだ」

…なすがまま。だけど凄く…ドキドキしていた。こんな時、良くない事を聞かされるような気がしたからだ。…悠人に会ってしまった。ジンさんは似てる。…悠人に似てるから、きっと…。
ジンさんも私の前から居なくなる。
そう思った。

「逢生ちゃん、もう私は、ここを離れるんだ」

…やっぱりだ。ジンさんも居なくなってしまうんだ…。
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