さようなら、初めまして。
私は悠人に会った事と、悠人の今一緒に居る彼女との事、怒濤のように過ぎた数時間の出来事を、ツラツラと長文で一方的にアキちゃんに送りつけた。
【私も、一方的に、とにかく話すね。びっくりした。とにかく驚いたよ。本当にそんな事、あるんだ。…辛い現実だよ。逢生、大丈夫?
まだ冷静になれなくて当たり前なんだから、最低だと思う事、言いたい気持ち、湧いてきてもしようがないよ。しかし、…はぁ。そんな結末。それでいいの?て、言ってもどうしようもないんだよね。人の気持ちとか、過ぎた時間とか。私も、忘れてしまえって、言ってた手前…。ん゙ーん゙ー。敢えて言うけど、取り戻さなくていいのって、今は言わない。ジンさん居るから。
衝撃的な事実だったんだけど、悠人君とはこれで終わったんだ。何を責めたってどうにもならない、か。
それと、ジンさんとは始まったんだ。やっぱりジンさんと悠人君は何一つ関係なかったって事だ】
そう返信が来た。そしてさらに追加も来た。
【ジンさんの存在、ジンさんに出会ってなかったら、悠人君への対応、感情、違ってたんじゃないのかな。…もっと、言いたくて、口に出した事、あったかもしれないよ。それを一つ一つここでは言わないけど。そんな、あっさり引き下がらなかったかもだよ。
結果、終わったとしても、…嫌な人間になったとしても、言いたい事はあったと思うんだ。だってそうでしょ?偶然会った。でも、音信不通の間に、理由はあったにせよ、別に彼女ができてた。記憶が戻った時点で逢生に会いに来る事、来れなかった説明をしてないんだよ。どれだけ悩ませたと思ってんのよって話。死んでしまったのかも知れないって思う事で、到底納得できない気持ちを諦めようとしてたのに。悠人君は生きてた。生きてたんだから。そこは良かったとしても、もっと、男気を見せて欲しかったかな。解らないよ?もしかしたら、明日にでも、逢生を訪ねて来ようとしてたかも知れない。『元』彼、だからって、ちょっと庇ってる訳じゃないけどね】
…そうだ。解らないって言ってくれると、それは解らない事。悠人が今日会って気持ちの全てを語ったかどうかなんて、悠人にしか解らないから。
似てるからって…、完全に悠人を失いたくないと思って、ジンさんの中に悠人を存在させようとしていた。…亡くなってもないのに、居なくなる理由はそれしかないって、自分に思い込ませて…。納得はできなかったくせに。でも、もう彼女が居る。別の世界に居る人になった。
……悠人を…返してって……、言うには、もう、資格もない。私は言えるだけの手を尽くしてない。言えない。だから言うつもりもない。でも、いい人のふりで、…いい人でもなかった。意地悪も言った。結局言葉として言っちゃったけど。終わりだ。悠人とは…終わってしまったんだ…。だったら、もっともっと、自分が嫌になるくらい、酷い事、言えば良かった…?
コンコンコン。ガシャンガシャンといきなり音を立てて驚かさないように、外枠をノックした。
「百子さん?おはようございます、早くにごめんなさい、逢生です」
ゴトゴト……。カラ…カラ…。百子さん、起きてた。
「はいはい、逢生ちゃん、おはよう」
「おはようございます。あの、百子さん、昨日の女性ですが、あの人は、悠人の彼女さんでした」
「あら……、あらあら、まあ…そう…。そうだったの…。色々、あったのね。人生は、一寸先は…解らないから。いい事も、そうじゃない事も、待ち受けているものだからね」
「…はい」
闇、という言葉は言わなかった。百子さんが言うだけでとても意味深い…。
「そう、あの人がね、…そう……随分と…。……あ、逢生ちゃん、ちょっと待って頂戴。これよ、……これ」
何かしら?……フフ、今度こそお菓子?
「これ、はい」
「あ、これ…綺麗になってる…え、百子さん」
見せられた物は捨てられたはずの靴だった。
「余計なお世話だったかしら?でも、お気に入りの物は、ね?やっぱり、無くしてしまうより、あった方がいいでしょ?」
……何だか。何ともいえないタイミングというか。捨てずに直してくれたんだ。
「…百子さん…。あ、代金」
「ううん、そんなの要らないわ。一度は捨てた物でしょ?もう逢生ちゃんの物じゃなくて、ゴ、ミ、でした。ホホホ。だからこれは私が勝手にしたの。それで、改めて逢生ちゃんにあげるのよ。また逢生ちゃんの物になりました、はい」
…百子さん。
「お気に入りの物には中々出会えるものじゃないから。よく考えて、悩んで選んだモノでしょ?そうして手に入れたモノはずーっと、ずーっと大切にしないとね。諦めるなんて悔しいでしょ?古いって言われるかも知れないけど、私達は壊れるまで履き続ける、傷んだら直す、そうやって暮らして来た世代ですからね」
…百子さん。百子さんの言葉……色々と考えちゃう。
「…有り難うございます、百子さん。でも、やっぱり代金は私、払います」
「いいのよ。勝手にしたって言ってるでしょ?黙って受け取ってくれないのなら、またゴミに出しちゃう、捨てちゃうわよ?」
「あ、百子さん…フフ。今、ずっと大切にしないとって言ったのに。有り難うございます、本当に有り難うございます、私、嬉しいです。大事に履きます…そうですよね、手に入れたモノは大事にしなきゃ、ですよね」
「そうね。きっとこの靴の方が、私より長生きするわね。ホホホ」
百子さん…。駄目になって捨てたはずのパンプスが、改めて綺麗に直されて…私の手の中にあった。一度は諦めた、もう、とうに無いと思ってた。…無くなってるものだと思い込んでいた。……戻って来た。
「百子さん、私…」
「はい?」
【私も、一方的に、とにかく話すね。びっくりした。とにかく驚いたよ。本当にそんな事、あるんだ。…辛い現実だよ。逢生、大丈夫?
まだ冷静になれなくて当たり前なんだから、最低だと思う事、言いたい気持ち、湧いてきてもしようがないよ。しかし、…はぁ。そんな結末。それでいいの?て、言ってもどうしようもないんだよね。人の気持ちとか、過ぎた時間とか。私も、忘れてしまえって、言ってた手前…。ん゙ーん゙ー。敢えて言うけど、取り戻さなくていいのって、今は言わない。ジンさん居るから。
衝撃的な事実だったんだけど、悠人君とはこれで終わったんだ。何を責めたってどうにもならない、か。
それと、ジンさんとは始まったんだ。やっぱりジンさんと悠人君は何一つ関係なかったって事だ】
そう返信が来た。そしてさらに追加も来た。
【ジンさんの存在、ジンさんに出会ってなかったら、悠人君への対応、感情、違ってたんじゃないのかな。…もっと、言いたくて、口に出した事、あったかもしれないよ。それを一つ一つここでは言わないけど。そんな、あっさり引き下がらなかったかもだよ。
結果、終わったとしても、…嫌な人間になったとしても、言いたい事はあったと思うんだ。だってそうでしょ?偶然会った。でも、音信不通の間に、理由はあったにせよ、別に彼女ができてた。記憶が戻った時点で逢生に会いに来る事、来れなかった説明をしてないんだよ。どれだけ悩ませたと思ってんのよって話。死んでしまったのかも知れないって思う事で、到底納得できない気持ちを諦めようとしてたのに。悠人君は生きてた。生きてたんだから。そこは良かったとしても、もっと、男気を見せて欲しかったかな。解らないよ?もしかしたら、明日にでも、逢生を訪ねて来ようとしてたかも知れない。『元』彼、だからって、ちょっと庇ってる訳じゃないけどね】
…そうだ。解らないって言ってくれると、それは解らない事。悠人が今日会って気持ちの全てを語ったかどうかなんて、悠人にしか解らないから。
似てるからって…、完全に悠人を失いたくないと思って、ジンさんの中に悠人を存在させようとしていた。…亡くなってもないのに、居なくなる理由はそれしかないって、自分に思い込ませて…。納得はできなかったくせに。でも、もう彼女が居る。別の世界に居る人になった。
……悠人を…返してって……、言うには、もう、資格もない。私は言えるだけの手を尽くしてない。言えない。だから言うつもりもない。でも、いい人のふりで、…いい人でもなかった。意地悪も言った。結局言葉として言っちゃったけど。終わりだ。悠人とは…終わってしまったんだ…。だったら、もっともっと、自分が嫌になるくらい、酷い事、言えば良かった…?
コンコンコン。ガシャンガシャンといきなり音を立てて驚かさないように、外枠をノックした。
「百子さん?おはようございます、早くにごめんなさい、逢生です」
ゴトゴト……。カラ…カラ…。百子さん、起きてた。
「はいはい、逢生ちゃん、おはよう」
「おはようございます。あの、百子さん、昨日の女性ですが、あの人は、悠人の彼女さんでした」
「あら……、あらあら、まあ…そう…。そうだったの…。色々、あったのね。人生は、一寸先は…解らないから。いい事も、そうじゃない事も、待ち受けているものだからね」
「…はい」
闇、という言葉は言わなかった。百子さんが言うだけでとても意味深い…。
「そう、あの人がね、…そう……随分と…。……あ、逢生ちゃん、ちょっと待って頂戴。これよ、……これ」
何かしら?……フフ、今度こそお菓子?
「これ、はい」
「あ、これ…綺麗になってる…え、百子さん」
見せられた物は捨てられたはずの靴だった。
「余計なお世話だったかしら?でも、お気に入りの物は、ね?やっぱり、無くしてしまうより、あった方がいいでしょ?」
……何だか。何ともいえないタイミングというか。捨てずに直してくれたんだ。
「…百子さん…。あ、代金」
「ううん、そんなの要らないわ。一度は捨てた物でしょ?もう逢生ちゃんの物じゃなくて、ゴ、ミ、でした。ホホホ。だからこれは私が勝手にしたの。それで、改めて逢生ちゃんにあげるのよ。また逢生ちゃんの物になりました、はい」
…百子さん。
「お気に入りの物には中々出会えるものじゃないから。よく考えて、悩んで選んだモノでしょ?そうして手に入れたモノはずーっと、ずーっと大切にしないとね。諦めるなんて悔しいでしょ?古いって言われるかも知れないけど、私達は壊れるまで履き続ける、傷んだら直す、そうやって暮らして来た世代ですからね」
…百子さん。百子さんの言葉……色々と考えちゃう。
「…有り難うございます、百子さん。でも、やっぱり代金は私、払います」
「いいのよ。勝手にしたって言ってるでしょ?黙って受け取ってくれないのなら、またゴミに出しちゃう、捨てちゃうわよ?」
「あ、百子さん…フフ。今、ずっと大切にしないとって言ったのに。有り難うございます、本当に有り難うございます、私、嬉しいです。大事に履きます…そうですよね、手に入れたモノは大事にしなきゃ、ですよね」
「そうね。きっとこの靴の方が、私より長生きするわね。ホホホ」
百子さん…。駄目になって捨てたはずのパンプスが、改めて綺麗に直されて…私の手の中にあった。一度は諦めた、もう、とうに無いと思ってた。…無くなってるものだと思い込んでいた。……戻って来た。
「百子さん、私…」
「はい?」