さようなら、初めまして。
【メールだからといって時間も配慮せずすみません。
いい人でもないのに、いい人にもなり切れず、だからと言って、嫌な人間になってもいいから、言いたい事を思いっきり言う事もできず。ただ、現実を知って、冷静になれないまま、いい人を装って…。
でも、やっぱり嫌味な事、言ってしまいました。行き着くところは現実なんですよね。変えようもない現実。勝ち負けではなくても、いいとか悪いとかではなく、思いの強さに負けたのだと思います。
彼女が悠人を手に入れたかった気持ち、最初は悪いと思っていた。でも、ブレずに凄く強かったんだと思います。私は、そこに辿り着くまでの通過点のようなモノだったのかも知れません。
悠人の人生の通過点。通りすがりの人間Aですね。
やっぱり、負け惜しみなんでしょうね。記憶のない時にあった事はあった事として、難しいでしょうけど…じゃあって、戻って来たい、彼女との事は記憶がなかった時の事として忘れて……て程の気持ちにはなれなかった。私は悠人にとってその程度だった】

【悠人君を擁護するつもりはないけど。さすがに身元を隠されていた事はショックだったと思う。それがなければ…と、思った事もあったと思う。思わないはずはないと思うよ。
元々の自分には逢生という好きな人が居たのだから。
悠人君にとって、不幸な事に、一緒に居て、気持ちを交わしてから後で知ったんだ。逢生ちゃんを思えば葛藤はあったと思う。物凄い葛藤だったと思う。それでも世話をしてくれた彼女を選んだ。戻れないと思ったんじゃないのかな。
思いの強さは相手程はないはずだ。情を取ったのだと思うよ】

情…。好きとは、またちょっと違うモノ…?

【来週から本社勤務に戻る。住んでいるところも変わる。遠くなる。言ったけど、今までと違って時間はなくなる】

あ。

【遠くなっても会えなくなる訳ではない。連絡は取れる】

…。

【私、今、支離滅裂で。自分の中に何もなくて】

【何もないんだ】

…。…あ。…。ジンさんも無いって…思わせてしまった。でも、今は、何も考えられない。

【はい】

【暫くは会えないね。いや、言い方が狡かった。私とも会わない方がいいと思う】

今、これ以上自分の気持ちで色々言うべき事ではないと思っている。
逢生ちゃんは、終わったと言っても傷ついている。何も考えられない状態なんだから。
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