さようなら、初めまして。
「その、おめでとうって、何にですか?」

え…意地悪なの?随分、図太い態度を取るのね。ニュアンスだけでは納得できないから、私の口から、一言一句、言わせたい訳ね。解ったわ。あ、待って。聞いて知ってるって言う訳にもいかないか。だったら、あ゙ー、そもそも、おめでとうなんて言わなきゃ良かった。…はぁ。避けたいがために、逆に立場が悪くなったわ。

「…結婚です、するんでしょ?だから、おめでとうって言ったんです」

もう、仕方ない。別に、連絡を取り合ってる訳じゃない。これは言ってみたら、悠人からの私達の完全な終わりだって報告だから。

「誰が、誰とです?」

…。もう、苛々してきた。そんなに言わせたいの?私、まだそんなに、心の底から祝えない、それにもう貴女とは関わりたくないから。…試してるんだ。
貴女はもう悠人とは無理なんだって、思い知らせたいのね。……解ったから。

「…あなたと、悠人、さん、が、です」

どう?これで満足?

「え?私と悠人さん?」

……もう、すっとぼけて。まだ言わせたいの?

「それ以外、誰に私がおめでとうって言うの?」

「しませんよ」

……え?

「ていうか、結婚どころか、終わりました」

終わった?何を…言ってるの………。しないの?

「悠人とは終わりにしたんです」

嘘よ…嘘。

「終わったって…。そんな……、貴女にとって、そんな簡単なモノだったの?悠人は結婚するって決めてた…」

…騙してまで…一緒に居た人だよ…?

「え?そんな話、されてないですよ。別れましょうって言っても、何も言われなかったし」

ぁ……どういう事…。私には確かに結婚するって。いつ、終わったの…。何故?

「どうしようもない成り行きなら、自然に芽生える気持ち、解らないでもない。だけど、人のモノを欲望のまま狡く奪っておいて、情に訴えるようなやり方、人の不幸の上で、幸せになれると思うなよって」

「…え?」

な、に…いきなり、なに。この子に何があったの、悠人と何があったの?けんか?…けんかくらいで、終わるような思いじゃないでしょ?

「兄に言われたんです。そんな後悔するような、恋愛とも言えないような事はするなって」

え。

「あー、ちゃんと言わなきゃ解んないですよね。私、母親の違う、まあ、父親も違うんですけど、兄が居るんです。すっごく厳しくて、言う事、凄く正しくて…」
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