さようなら、初めまして。
「だから、悠人とは無かった事にします。こんなところでごめんなさい。改めて謝ります、ごめんなさい。私、悠人とは、結婚なんてとんでもない。強行突破でもしようものなら、兄にどれだけ叱られるか。悠人の事は好きだったんです、それは本当です。見た瞬間…超ータイプで。だから、欲しかった。自分のモノにどうしてもしたかった。私のマンションに匿えば解らないと思ったし。お医者さんには口止めすれば大丈夫だったし」

……。随分…。あの時の、しおらしい印象とは違う。言葉遣いだって、ポロポロと、軽い発言に。とにかく、軽い…。ぇ、若い子って、こんなものなの…?

「だから、お返ししますね」

お返ししますって……物じゃないんだよ、そんなあっさりと……?
悠人のメモにあった事は、何?……な、に。お返しするとか、無かった事にとか。……正しい事を兄に言われたから?……そんな事、解ってるじゃない。それでも自分の物にしたかったんでしょ?そんなモノだったの…。二人に何があろうと関係ない。だけど…こんな……どうしても沸々する。
悠人……。


【アキちゃん、私、人を見る目がないかも】

苛々していた。

【そんなの、誰だってそうだよ。見えてる部分なんて一部なんだから】

あ。一刀両断。ぶった切られた。……ハハ。

【人間不信になるような事でもあった?】

…鋭い。

【か弱そうな人だと思ってたのに。ゔ~ん、そうでもなかった。ていうか、軽くて、腹立たしい。はぁ、あんなに思い詰めてたから、もう、いいって、仕方ないって思うしかないって思ったのに。それが…なんだか、あっさりして、……何だったの?返すって、物じゃないんだけど!】

【ちょっと、もしかして、悠人君の、相手のこと?返すって言われたの?何それ】

…。

【そうなんだね。なんだか、呆気に取られて言葉が出ないよ】

ブー。あ、…ジンさん。

【アキちゃん、ごめん。ちょっとまた後で】

【うん】

【妹が、中途半端な事をして、兄として謝ります。メールで、取り敢えず、事実を知らせたくて、また、きちんと正式に謝りに伺います】

あ、これ…妹が?…これって…まさか、こんな事、あるの?…。
< 75 / 91 >

この作品をシェア

pagetop