さようなら、初めまして。
【妹が名前を出して話さなかったから、解らなかった。杏梨の兄だと知って、私の言う事も、信じてもらえるのか解らないが、悠人君は、杏梨と居たんだね。私はこの事実を最近まで知らなかった。本当なんだ。
妹は自由奔放な性格で、それが、まさか、杏梨が騙すような事をしていたなんて。しかも、その相手が悠人君だったなんて。
杏梨は、親父が再婚した相手の連れ子で、私とは全く血の繋がりのない妹になるんだが、年齢も離れている上、親父が甘やかした事もあって、我が儘に、何でも許されると思ってきたところがあった。一人暮らしを許していたせいで、目が届かず何をしているのか、私も知らなかったんだ。
親や本人に代わって私が謝っても、しかも、謝っても取り返しのつかない事をしてしまったのだけど。私に謝る機会を作ってくれないだろうか】

身内として責任を感じたのだろうけど、それは、されても、意味はない。

【偶然ですね。今日、私は杏梨さんに会ったんです。それで、その事は聞きました。お兄さんに言われて、悠人とは終わりましたって】

【それは知らなかった】

【私なら、もういいんです。なんていうか、もう、何も、戻りませんから。ジンさんに謝ってもらうのは違うと思います。だから、そんな事では会いません】

悠人…、結婚するって言ったのは、もう、私にも関わりたくない、煩わしさから解放されたかったからじゃないだろうか。あの時はまだ杏梨さんと終わってない…。
だって、嘘をつかれていたのは、知ってたのよね、後から聞いて。……確か、そうだったはず。今まで、というか、メモを書く時も、まだ知らなかったって、事じゃないよね。……え?…解んなくなってきた。
杏梨さんは、もしかして、その事、悠人には打ち明けないままでいたの?
話すって、決めてたって言ってた。だから、悠人が記憶が戻った時、言ったのよね…?
私との話ではそう言ってた。そんな、いいような事を言っておいて、実は隠していた事、そのままだった?
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