さようなら、初めまして。
「あの、ご主人、奥さん。長い時間、有り難うございました。帰りますね」

「お世話、かけました」

声を掛けたら奥から二人が現れた。

「……帰るの?うちはいいのよ、朝までだって。もう、いいの?」

「はい。フフ。全てに甘えたら、何もかも…きりがなくなっちゃう」

「そうね。そうよね。ハルト君、元気だったし、またいつでも会えるんだし。今日、ギューッて詰め込まなくてもね」

「…詰め込みました」

「そ、う」

「あ。また、またね、来ますから。ね」

「はい、また来ます、な?」

「うん」

「…でも」

「おい、お前が引き止めて話し続けてどうする。もう夜遅いんだ。明日だってある。また来てくれるって言ってるんだから、な?」

「…だって」

「でもとか、だってとか…いいから」

悠人が私の手を取り繋いだ。

「…また来ます。有り難うございました。迷惑かけてすみませんでした。逢生は送って行きますから」

「うん…じゃあ、気をつけて帰ってよ?」

「はい、責任もって。大丈夫です」

ギュッとされたから、私も手を重ねて握った。

「忘れ物はない?」

「はい、ありません」

「では、おやすみなさい」

「おやすみ」

カランコロン。外に出た。ひんやりと空気が寒かった。

「流石に夜遅いと寒いね…冬、早く来ちゃうのかな。暑い時からいきなり寒くなっちゃうから。秋ってもっとあったよね」

「逢生…」

「うん?」

悠人の腕が伸びて来て、私を包み込んだ。……やっぱり駄目だ、こんな事してたら…。この雰囲気に流されて、直ぐ壊れてしまうモノ、それをまた求めて…勘違いしてしまいそうだ。

「逢生…ごめんな。…あったかいな…」

「うん。遭難しそうになったら、やっぱりこうだよね」

「フ。あぁ、そうだよな。…これが一番。山、登る予定でもあるのか?」

「…フフ、ないよ。ねえ、帰ろう?」

「…うん。もうちょっとだけ、…あったかいから」

「うん、解った。…もうちょっとだけ」
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