さようなら、初めまして。
手を繋いで歩いた。
少ない街灯の弱い明かりの中、公園が見えてきた。

「ブランコ、乗ったんだよ」

「ん?いつ?一人でか」

「ううん、一人じゃなかったよ」

「…そうか」

「…うん」

詳しく聞かない言葉、返さない言葉に色々過るモノはあるだろう。

アパートが見えてきた。…うん。
思いは違っても名残惜しかった。こうして悠人と歩く事はもうないんだ。この手を離したら、じゃあって、おやすみって。それで終わりだ。

玄関が見えてきた。

「変わらないな」

「あ、うん。昔のままだよ。何も変わらない」

「鍵」

「え?」

「俺に開けさせてくれないか」

「うん、いいよ。……ちょっと待ってね」

手は自然に離れる。

「はい」

悠人の手に鍵を渡した。

「うん。懐かしいな、この南京錠」

こんな鍵を玄関にかけているのは珍しい。この南京錠自体が懐かしいモノ…レトロな物だ。南京錠を掴み、鍵穴に鍵を差し込み回した。外した南京錠と鍵を渡された。

「うん。あ、有り難う」

入ったら終わり。

「じゃ…」

「…逢生、…あれ、本当なのか?」

「え?」

「俺に言ったこと」

「ブランコ?」

「いや。…フ。…違うよ。それは本当だろ?嘘つく必要もない事だ」

「うん、本当。本当に乗った」

「うん、解ってるよ。そうじゃなくて、今、彼が居るって言ったこと、そっちだ」

あ。それは…。そもそも彼っていうか、今は、また、微妙な感じになって。でも。

「居るよ」

「本当なんだ」

「うん、本当」

「…うん、……良かった。大きなお世話だけど、どんな人なんだ?いい奴なのか?」

ジンさんは。悠人…。

遠くに蒼白いライトが見えた。あっという間に近づいた。車だ。眩しい…。悠人が前に立った。
近くで停まり、ライトが消えた。人が降りて来た。

「逢生ちゃん!」

「……ジンさん」
< 83 / 91 >

この作品をシェア

pagetop