死にたがりティーンエイジを忘れない
自分のまわりには殻のような膜のようなものがあって、周囲の空気から切り離されている。
そんな感覚がつねにあった。
おしゃべりの声を聞いても、それを言葉として認識しない。
単なる雑音として聞き流す。
そんな能力が身に付いたみたいだった。
受験の日も淡々と終わって、合格発表も淡々としていて、わたしは無事に日山高校の文系特進クラスに合格した。
ひとみも同じクラスだった。
雅樹は理系の特進クラス。
幸い、琴野中から文系特進への進学者はほかにいなかった。
わたしの所属する学年は、どうやら歴代の琴野中でも特に勉強のできない学年だったようで、志望校に落ちる人がけっこういた。
琴野中では成績が悪くなかった人でも、だ。
合格発表の後、菅野がわざわざわたしに報告に来た。
「おれ、落ちました。上田は受かってた。
いや、おれはもともと無理だろうなって思ってたんだけど。それに、野球やりたいから、滑り止めで受けた男子校のほうで全然いいんだけど。まあ、うん、ちょっと残念」
何て返せばよかったんだろう?
わたしが何も言えずにいたら、菅野は照れ笑いをして走っていってしまった。
まわりの女子がまた、にぎやかに菅野をこき下ろしていた。
ああいうところがいちいちキモいんだとか、ガキすぎるとか。
うるさいよ。
わたし自身、どっちかっていうと菅野の側に近いと思う。
あんたたちの側よりも、あいつのがマシだと思うよ。
そう言ってやりたくても、わたしの喉は動かない。
歌う声を張り上げることができたはずの喉は、しゃべり方さえ忘れている。
ときどき引き絞るような痛みとともに上がってくる胃液のせいで喉の奥が焼けて、いつもイガイガ、ざらざらする。