死にたがりティーンエイジを忘れない
「じゃあ、どんな顔しろってんだよ? 好きも嫌いもなく普通の距離感だと思ってた先輩で、もう部活に来ないから会わなくなって三ヶ月でさ、このタイミングでいきなり、実は好きだったとか言われて。
どういう表情すればいいかわかんないときって、顔、笑えてこない?」
「そうかもしれないけど」
「あのさ、おれって客観的に見てそんなにカッコいい? この顔、そんなにモテる要素ある?
顔とか容姿とかのせいで、おれ自身が知らないおれが部活の女子の間で独り歩きしててさ、何人泣かせたのって言われて。何人と寝たのって。んなわけねぇだろ、バーカ」
雅樹は笑ったままだ。
ケラケラ笑いながら、いら立ちを吐き出している。
「おれはただ、誰ともぶつからないように、敵を作らないように、全体的にみんなといい感じの距離でやってけるように、それだけ考えて立ち回ってる。
八方美人かもね、うん。それは否定しないけど、まさかプレイボーイの両刀使いなんて言われるとはな」
「それ、告白を断ったら言われたの?」
「そう。泣かしちゃった、しまった、って思ったら、次の瞬間には態度変わってんの。顔がよくてモテるのをいいことに好き放題してんじゃねーよ、みたいな。被害者の会でも作る気かね、あの人は」
「想像つくかも。中学時代、女子の人間関係って、そういうのがけっこうあった。目の前にいる相手に合わせて、陰口や悪口のターゲットを変えたり方向性を変えたり」