死にたがりティーンエイジを忘れない
ひとみは、写真から目を上げた。
「蒼ちゃんはいつもズボンだね。髪も短くて、隣に写ってる男の子より背が高い。何かカッコいいよね」
「スカート持ってないから。制服以外は」
「男になりたいみたいな気持ち、もしかして ある?」
「なりたいわけじゃない。女子でいたくない。それだけ」
「なるほどね。蒼ちゃんがそう考えてるっていうの、わかるよ。蒼ちゃんのそういうところやっぱりカッコいい」
ひとみはニコニコして、スカートをふわっと広げながら、わたしにくっついた。
ハッキリとした違和感がわたしの中に生まれ始めたのは、たぶんそのときだったと思う。
ひとみの様子が、ひとみの態度が、ひとみの目の輝き方が、木場山に住んでいたころと比べて何だか変わった。
その何日か後、ひとみからデートしようと誘われた。
カラオケに行って買い物をして晩ごはんを食べて帰ろう、と。
わたしは断らなかった。
断る理由を見付けられなかったから。
珍しく補習も模試もない日曜日、ひとみの下宿の近所のバス停で待ち合わせて、繁華街に行った。
まずファミレスでお昼を食べて、カラオケ、本屋、アクセサリーショップ、アパレルショップ。
最後に、デートの定番として有名なチェーンのイタリアンに行って、カップル向けの二人前のセットを食べた。