死にたがりティーンエイジを忘れない
小柄なひとみは、レトロでふわふわしたワンピース姿。
わたしは男女兼用のネルシャツに、飾り気のないジーンズとスニーカー。
「身長差十五センチって、ちょうどいい感じだよね」
はしゃいでわたしの手を取るひとみに、わたしの中の違和感は膨らんでいった。
カラオケで、ひとみはラブソングを歌った。
わたしは男性の曲を入れることがもともと多いのだけれど、その日はひとみのリクエストがあって、それに従っていたら全部が男性の曲になった。
どのアクセサリーが似合うか選んで、と言われた。
服の試着にも付き合った。
買いたいもののないわたしはぼんやりしながら、とりあえず一日、ひとみのやりたいとおりにやらせていた。
ひとみはずっとわたしの手を握ったり、わたしの腕に自分の腕を絡めたりしていた。
帰りのバスで嬉しそうに言った。
「デートらしいデート、してみたかったんだ。またこういうことできるかな?」
「別にいいけど」
「じゃあ、これからは蒼ちゃんがあたしの王子さま係ね」
わたしは失笑してしまった。
顔のニキビは、ミネソタにいる間に少し引いていたのに、帰国してまた赤く腫れ出した。
王子さまなんていえるようなスリムな体型でもない。