死にたがりティーンエイジを忘れない


でも、ひとみは本気だった。


「あたし、この間、告白されたんだよね。雅樹くんと同じ理系クラスの男子に。あたし、数学のことを聞きに先生のところに行くでしょ? そのときにチラチラ話す相手ではあったんだけど、告白されたとき、怖かった」

「怖かった?」

「余裕がない目をしてた。本気で力を出したら、男子ってすごく強いよね。あたし、ちっちゃいし、男子はみんな大きくて、その体格差だけですごく怖いんだよ」

「告白、断ったの?」

「断った。そしたら、すごく寂しい気持ちになった。好きじゃない男子とは付き合えないよ。怖いと思った相手と付き合えない。でも、デートとか、してみたい。寂しいのは嫌なの」

「だから、わたし? 他に頼める相手いなかったの? 雅樹とか」

「蒼ちゃんしか考えられなかった。それで、今日の一日デートしてみて、正解だったと思った。また誘うね?」


わたしは答えない。

答えられない。

拭えない違和感の正体を探そうとして、窓ガラスに映る自分とにらみ合いながら、じっと考える。


ひとみはご機嫌でバス降りていった。

わたしのモヤモヤはこの日に始まって、ずっとまとわり付き続けることになる。


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