死にたがりティーンエイジを忘れない
ミネソタから帰ってきて二学期が始まってから、わたしは一つ新しい習慣を作った。
学校帰り、三キロの距離を歩いて帰ること。
歩くときがいちばん考えごとがはかどるから。
小説のネタを思い付くのも、歩いているときが多い。
歩きながらわたしがやったのは、頭の中でケリーやブレットに話し掛けることだ。
その日あった出来事や、自分の考えていること、受注の小説の筋書き。
それらを全部英語で、頭の中のケリーやブレットに報告する。
わからない単語、直訳するだけでは作れない文章に、しょっちゅう出くわす。
わからなくても、私はどうにか伝えようとする。
違う単語を探したり、簡単な文章をいくつもつなげてみたり。
次にいつケリーたちと会えるかわからない。
もしかしたら一生会えない可能性もある。
でも、もしも会えるなら。
次に会うときには、わたしはもっと話をしたいと思っているから。
夏服が中間服になって、残暑が秋風になって、日が暮れるのが早くなって、どんどん寒くなっていった。
最初はポツポツと途切れてばかりだったわたしの頭の中の英語は、稚拙な言葉ばかりではあっても、だんだんきちんとした形を取るようになった。