死にたがりティーンエイジを忘れない


話の途中で、ひらひらワンピースのひとみがやって来た。

わたしたち三人でバスに乗って、いくつか先のバス停から尾崎も乗ってきた。

尾崎はシンプルなニットの上着とロングスカートで、ニットが胸の大きさを強調していた。

上田がチラチラそっちを見るのがわかった。


まずクリスマスカードを買った。

映画は『ロード・オブ・ザ・リング』で、すごくおもしろかった。

ランチ、カラオケ、ウィンドウショッピング。

一日フルコースで外出していることにわたしはだんだん疲れてきたけれど、ひとみは、はしゃいでいた。


上田が画材を見たいと言って、尾崎がついて行くと言った。

わたしとひとみは待っていることになった。

ショッピングセンターのオープンカフェでコーヒーを買って、わたしはひとみと向かい合って座った。


わたしが薄々感じていたことを、ひとみが言葉にした。


「尾崎ちゃんは、上田くんのこと好きみたいだね」

「あの人は中学のころから、けっこうモテるから」

「上田くんのこと? そっか、上田くんも琴野中出身なんだったね。今日のお出掛け、あたしはほんとは蒼ちゃんと二人のほうがよかったんだけど、でも、四人でも楽しいね」


楽しいんだろうか。

一人でもできることを、ただ単に四人グループでやっているだけ。

わたしはそう感じてしまうのだけれど。


だって、楽しいという感情をわたしが思い出した。

ミネソタで過ごした夏、理屈をこねる必要もなく、自然体でいるだけでわたしは笑えた。

顔が痛くなるほど笑っていたんだ。


今日は全然そんなふうじゃない。

わたしはプリクラを撮るときに「笑え」と言われたけれども、その一度でさえ頬がこわばって変な顔をしていた。


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