死にたがりティーンエイジを忘れない
コーヒーを飲みながら竜也と話して、わたしは久しぶりに笑った。
高校の制服を着たままだったのに、いつも肩に乗っかっているはずの重たいものを忘れていた。
竜也がミネソタの夏のあのさわやかな風を連れてきてくれたんだ。
竜也にケリーとブレットへのプレゼントを預けた。
ケリーはディズニーの『美女と野獣』の小さな絵本、ブレットへは『ドラゴンボール』のコミックス。
もちろん、両方とも日本語のものだ。
手紙も添えた。
あっという間に時間は過ぎて、わたしは竜也を駅の改札で見送った。
改札をくぐった後、竜也は振り向いて言った。
「ミネソタから帰ったら、また会いに来ます。お土産を持って」
竜也はわたしの非日常だ。
夏の終わりにもう一度、非日常に会えるなら、追い詰められてばかりの毎日もどうにかおぼれずに越えていけるだろう。
「わかった。じゃあ、また、そのときに。Have a nice trip」
「あっ、発音いい! Your English is so good」
「Because I always practice talking in English, in order to communicate with my friends in Minnesota」
いつだって学校帰りに頭の中で転がしている英語を口に出してみたのは、これが初めてだ。
中学で習うような簡単な単語と、受験英語を引っ張ってきた文章。
ああ、しゃべれる、という手応えがあった。