死にたがりティーンエイジを忘れない
すべての試験が終わって、帰り際。
カバンから出してポケットに移したばっかりのケータイが鳴った。
母が電話すると言っていたから、てっきりそれだと思ったら、ひとみだった。
〈もしもし、蒼ちゃん? 今どこにいる?〉
「校舎っていうか、建物を出たところだけど」
〈一緒に寄り道して帰ろう! クレープ食べたい!〉
「……ほかの人、誘ったら?」
〈蒼ちゃんがいいの。デートしよ?〉
何で?
いらだちがわたしの口を突いて出るより先に、ひとみは矢継ぎ早に約束を取り付けた。
〈正門前のイチョウのところで待ってるね。雨が上がってよかったー〉
通話は、あっという間に切られた。
一方的すぎる。
わたしは疲れていた。
ひとみをほったらかして裏門から帰ろうかと、ちょっと本気で思った。
でも結局、重たい足を引きずるようにして、待ち合わせ場所に向かった。
イチョウの木のそばで、ひとみはケータイで誰かと話していた。
わたしの姿を認めると、「じゃあバイバイ」と言って電話を切った。
ひとみは空を指差して微笑んだ。
「見て。天使のはしごがいくつもできてる」
わたしは久しぶりに空を仰いだ。
黒々とした雲間からまっすぐに差し込む光。