死にたがりティーンエイジを忘れない
バイトのシフトに入るたび、笹山が夢飼いに来店していることに気付いた。
わたしのほうからは挨拶しない。
たまに目が合ってしまって、そのときだけは会釈をする。
マスターも笹山の行動に気付いていた。
「彼、毎日来るわけじゃないんだよ。蒼ちゃんが入ってる曜日はいつも来てるけどね」
「そうなんですか」
「カッコいいよね。オシャレだし。響告大生には珍しいタイプだ」
「はい」
「彼みたいなタイプには興味ない?」
「いえ……何ていうか」
そもそも他人に興味がない。
友達と呼べる相手はできていない。
同じクラスの人たちと授業で顔を合わせれば、それなりに普通にあいさつをしてしゃべって、ノートを見せたりもする。
でも、それだけ。
誰かと一緒に出掛けるとか、そういうのは一度もない。
ケータイの連絡先も、まだ誰とも交換していない。
アドレス帳に入っているのは、日山高校時代に登録した家族と雅樹と竜也、それから鹿島先生の自宅の住所。
響告市に引っ越してきてから登録したのは、マンションの管理会社や夢飼いの連絡先だけだ。