死にたがりティーンエイジを忘れない
「自分で押します」
「そう? ごめんね」
笹山は自転車を支えて立ち止まった。
わたしも笹山も右利きで、自転車を押すときは、自転車の左側からハンドルを握る。
ハンドルを受け渡すとき、わたしと笹山の距離がひどく近付いた。
一瞬、背中に覆いかぶさられるような体勢になる。
わたしはビクッとした。
ざわざわと、寒気を伴いながら鼓動が騒ぐ。
居心地が悪い。
自転車にまたがって逃げ出すことを、チラッと考えた。
でも、体の動きも頭の回転も何だか鈍い。
この状況に付いていけずにいる。
立ち仕事の疲れもある。
「蒼ちゃんはすごくまじめなんだって、みんな言ってるよ。夢飼いのマスターも、蒼ちゃんと同じクラスの人たちも」
文学部の学生は、多くが教職免許を取る。
クラスの中にも、わたしと同じ教育心理学を受けている人もけっこういるから、笹山はその人たちと話したんだろう。
なぜそこまでするのか。
外堀を埋めるつもり? 情報収集?