死にたがりティーンエイジを忘れない
笹山が少し微笑んだ。
「ごめんね。でも、強引にでもこっちを向かせないと、蒼ちゃんはボクを視界に入れもしないでしょう。きみを好きだという気持ちは本気なんだよ。付き合ってほしい。蒼ちゃんのことを全部知りたい」
ガシャンと音がした。
わたしは自転車のハンドルを手放してしまったらしい。
笹山はそっちを見向きもせず、わたしの肩をつかんだ。
体の中に魂が入っていないみたいだった。
笹山の手が、唇が、舌が、体が、わたしに接触しているという感覚が、あまりにも遠かった。
でも、わたしは、自分が何をされているのかはわかっていた。
わたしは、抱きしめられてキスをされていた。
恋人でもない男から。
恋人なんてものは、わたしの人生に必要なかった。
わたしは、すべてにおいてイチかゼロかのどちらかでよくて、恋なんかゼロでよかった。
壊れてしまった。
汚れてしまった。
わたしはゼロには戻れない。