死にたがりティーンエイジを忘れない
〈蒼さん、久しぶりです!〉
竜也の声音からは、にこにこしているのが伝わってきた。
高校三年間でいちばん、いや、中二から今まででいちばん楽しかった日々の出来事が、パッと胸によみがえった。
「何? どうしたの? 何か用事?」
竜也につられて、わたしの声も弾んだ。
そういうちゃんとした自分でなければ、竜也と話をするのは恥ずかしい。
竜也が思い描いているわたしは、少し変わっているとしても、狂っても壊れても病んでもいない。
そのとたん、口の中に砂でも含んでいるかのような、ざらざら引っ掛かって飲み込めない不快感がわたしをとらえた。
その不快感は、罪悪感に似ている。
やってはいけないことをしているという自覚が、わたしの内側で膨れ上がった。
わたしは今、笹山ではない男性と親しく言葉を交わしている。
笹山ではない男性に対して、自分を魅力的に見せようとして笑顔をこしらえている。
それらは、笹山から禁じられていることだった。
一度、クラスの男子とテストやレポートのことを話しているのを、笹山に見られたことがある。
笹山は猛烈に不機嫌になった。その後、連れていかれたカフェでは一言も話さず、偶然を装いながら、わざとアイスティーのグラスを床に叩き付けた。