死にたがりティーンエイジを忘れない


竜也は言った。


〈イチロー先生からの伝言です。『前にも話したとおり、ホームステイの引率の仕事を手伝ってもらえるとありがたい。バイトということで、かなり格安で渡米できるよ』って〉

「ホームステイ……ミネソタの?」

〈そうです。おれは今年も行きますよ。今年はロングとショートの二つのコースがあって、おれはショートのほうのリーダーとして、空港で小中学生の点呼を取ったりとか〉

「すごい。受験生なのに、そういうことやる余裕あるんだ?」


竜也は冗談っぽく笑った。


〈おれが受けようとしてる響告大の理学部は、本番の試験で国語がないんです。数学と理科と英語で勝負。ということになれば、けっこう戦える自信があります〉

「そうなんだ」

〈もし国語があったら、百点満点で二十点も取れるかな? まあ、理学部志望はみんなそんなもんですよ。響告大対応の模試でも、十点超えたらスゲーって〉


それで、と竜也は改めてわたしに誘いの声を掛けようとした。

わたしの答えは一つだった。


「ごめん。わたしは行けない」


笹山が許すはずもない。


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