死にたがりティーンエイジを忘れない
その日ドラッグストアに行ったのは、食べ物を買うためだった。
カゴを手にして店内を徘徊し始めたときだ。
唐突だった。
音が、わたしの全身を貫いた。
アップテンポな轟音の乱舞、爽やかに明るい曲調。
その瞬間まで有線放送の店内BGMが流れていることさえ気付かなかったのに、曲が始まった瞬間に空気が変わった。
音量が上がったわけではなかっただろうし、知っている曲だったわけでもなかった。
けれど、なぜだか、その曲はわたしをとらえた。
しなやかに伸びる、少年のように尖った、不思議な声だった。
強がるみたいなロックサウンドを背景に「彼」は歌った。
包帯で無理やり覆い隠したわたしの心に、ずかずかと踏み入ってくるような歌だった。
感情なんてないふりをして、そのくせ本当はひそかに傷付いている寂しがりやの女の子。
怖がらずに、正直な笑顔や涙をどうか見せてほしい。
受け止めるから。
そんなふうに「彼」は歌う。
「何、言ってんの……?」
ふざけんじゃないよ、と思った。
怒りが湧いた。
何を勝手なこと言っているんだろう?
何さまのつもり?
優しさのつもり?
あんたに何がわかる?
一人で平気だって、必死で心を凍らせてきた。
そうやってどうにか自分を守ってきたのに、何で全部明かしてみせろなんて言う?
煮えくりかえる感情が、涙になってあふれた。
全身を揺さぶる音と声に、あらがえなかった。
我を忘れるほど衝撃的な歌だった。