死にたがりティーンエイジを忘れない


苦笑いする竜也は、新生活での発見を生き生きと語ってくれる。

わたしは笑ったし、自分のときの話もした。

すぐに喉が嗄れた。咳払いを繰り返すと、竜也は食事の手を止めて真剣な顔つきになった。


「やっぱり体調悪いんじゃないですか?」

「何でもない」

「でも」

「普段あんまりしゃべらないから、何か喉が疲れた」

「歌ったりとかは、もうしてないんですか?」


痛いところを突かれて、わたしは竜也から目をそらす。


「まあ……聴くほうが多い。BUMP OF CHICKENってバンド」

「あ、軽音部の友達が、すげーいいって言ってたバンドだ」

「この間、初めて聴いたの。聴き始めたばっかりって感じ。二〇〇一年にリリースした『天体観測』で一気に有名になったらしいんだけど、わたし、高校時代はテレビもラジオも触れてなかったから」


わたしはまた声がかすれて、咳払いをした。

夢飼いでのバイト中もよくこんなふうになるから、大丈夫なのかと、マスターや先輩たちに訊かれる。

大丈夫です、というわたしの返事はとても空っぽだ。


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