死にたがりティーンエイジを忘れない


竜也が食事を終えて、セットドリンクのミルクティーをもらった。

わたしは二杯目のブラックコーヒー。

わたしは、大丈夫かと訊かれて大丈夫と返すときみたいに、空っぽな気持ちで竜也に言った。


「もう食事とか誘わないで。わたし、彼氏いるから」


竜也がどんな顔をしたのか、わたしは見ていない。

知りたくなかった。

竜也は少しの間、黙っていた。


固まっていた空気が、再び動き出す。

竜也は、乾いた声で笑った。


「そうだったんですね。じゃあ、今日、迷惑だったですよね。すいません。彼氏さんに謝っておいてください。あの……彼氏さんって、どんな人なんですか?」

「どんな人、なんだろ……」

「え? えっと、共通の趣味があって知り合ったとか、何か、どんな感じなのかなって思って」

「あの人の部屋、本がない。音楽もなくて、学部も違って。あの人が好きな映画、わたしは、どこがおもしろいのかわからない」


つい今しがたまで笑っていられたのに、もうダメだ。

笹山のことを話し始めたとたん、竜也と二人で食事をしているという今の状況が、たまらなく苦しくなった。

苦しみをできるだけ抑えるために、わたしは急いで心を凍らせて、その動きを止める。


< 308 / 340 >

この作品をシェア

pagetop