死にたがりティーンエイジを忘れない
智絵は、本人が言うとおり、しょっちゅう赤くなった。
でも、照れたような笑顔を崩さずに、ときどきはわたしの目をまっすぐに見ながら、共通の話題であるファンタジー小説のことを語った。
好きなキャラクターのことや、好きなシーンのこと。
わたしも智絵も、たくさんしゃべった。
喉が渇いて、声が嗄れた。
いつの間にか、そろそろ帰らないといけない時間帯だった。
帰りのバスが同じ路線で、意外と近所に住んでいることがわかった。
バスを降りる直前に、智絵が顔を真っ赤にして、勢い込んでわたしに言った。
「しょ、小説のノート貸してくれない? 明日、返すから。読みたいの。全部」
「いいよ。おもしろくないかもしれないけど」
「そ、そんなことないよっ。同じ中二なのに、文章、すごくうまいもん」
「きみだって、絵、うまいでしょ」
智絵は目を真ん丸に見開いて、まばたきもせずにわたしを見つめた。
「ありがとう」
えくぼのできるキラキラした笑顔。
智絵はわたしの小説のノートを胸に抱きしめて、バスを降りていった。