死にたがりティーンエイジを忘れない


玄関フロアと廊下とキッチンが一緒になった狭くて冷たい空間で、わたしはそのまま倒れていた。

しばらく気を失っていたらしい。


「……さんっ、蒼さん! 蒼さん!」


呼ばれて、目が覚めた。

拍動する激痛は、まだ頭の中に居座っている。


竜也がそこにいた。

わたしの肩に手を掛けて、見たことのない切羽詰まった表情で。


わたしはきつく目をつぶった。

まぶたの隙間から刺さってくる光が、頭痛を増幅させる。

吐き気がする。

いつの間にか手に握りしめていた台所用のタオルを口に当てて、こみ上げてきた胃液を吐いた。


竜也が何かを言って、それがまともな言葉だとはわかるのに、わたしはまともでない言葉を返してしまう。

それをどこか離れた場所から見ている自分がいるような、異様な状態。

そして、ひたすらに頭が痛い痛い痛い。


結局どんな受け答えを経てそうなったのかわからないけれど、気付いたら、わたしはタクシーで病院に向かっていた。

竜也に支えられながら、途中のコンビニでもらったレジ袋の中に何度も吐いて、病院に着いてからはストレッチャーに乗せられた。


血液検査、尿検査、MRI検査、聴診、胃カメラ。

その場でできるひととおりの検査をして、痛み止めと水分補給の点滴を打たれた。

検査の結果は、胃が荒れていることのほかは、特に異常なし。


検査を受ける途中から、頭の激痛はだんだんと引いていった。

痛みに備えて体にギュッと力を入れていたせいで、全身が疲れ果てていた。

関節をあちこち傷めて、その痛みがじわじわとつらかった。


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