死にたがりティーンエイジを忘れない
竜也が、点滴につながれたわたしの腕を見下ろした。
「体をボロボロにって、腕の切り傷のことですか? 耳も、ピアスがいっぱいになってて」
「……うん」
「誰も何も言わないんですか?」
「いつも長袖で、傷を人に見せないようにしてる」
「でも、彼氏さんは見るんでしょう? 叱られませんか?」
「何も言われたことない。傷も、ピアスも」
「変でしょう、それ。おれなら蒼さんのこと叱りますよ。何で自分を傷付けてしまうのか、話を聞かせてほしいって言いますよ」
「何も言われないの。この傷も何もかも、もう癖になってて、自分ではどうしようもない」
天井がにじんだ。
息が苦しかった。
まぶたを閉じたら、目の上に無理やり乗っかっていた涙が、目尻から流れて落ちた。
「蒼さん、次に腕を切りたくなったら、おれを呼んでください。おれの腕、貸すから。ボロボロにしてくれて、全然いいから」
「そうじゃない。違う」
「どこが、何が違うんですか? 人を傷付けたくない? 自分の傷はよくても、おれの腕を切るのはイヤだ?」
「だって、人を傷付けたいなら、とっくに暴れて、事件とか起こして……何でそうならなかったのか、自分でも不思議だけど」
「おれもイヤなんですよ。蒼さんの腕がそんなふうに傷だらけなの、イヤです。好きな人が苦しんでるのを知ってて、そのまま見て見ぬふりって、絶対イヤです」