死にたがりティーンエイジを忘れない
点滴の管が刺さっていないほうの腕で、わたしは自分の目元を覆った。
竜也はしばらく黙っていて、それから、わたしの手のひらに硬く四角いものを触れさせた。
ケータイだ。
「ここ、響告大の附属病院なんで、医学部の先輩たちが検査の助手とかしてて、蒼さんの実家に連絡入れたほうがいいってアドバイスもくれて、おれ、勝手に蒼さんのケータイいじりました。すいません」
「……うん」
「ご両親、今度の休みに様子見に来るっておっしゃってました。後でまた連絡してみてください」
「わかった」
竜也はちょっと言いにくそうに続けた。
「彼氏さんにも連絡したほうがいいかなって思ったんだけど、迷ってるうちに、連絡しそびれて」
「あの人には何も言いたくない」
「何で?」
「さあ……何でだろう? 何で、こんなにねじれてるんだろう?」
「ねじれてる?」
「あの人といても、しゃべらない。笑わない。あの人の部屋で家事とセックスだけして、わたしはそのためだけの存在みたいで、こんな自分がけがれてるように感じられて。何かもう、イヤだ」
初めて声に出して言った。
わたしを好きだと言った竜也の前で、わたしはひどい言葉を吐いている。
「けがれてないですよ。傷付いてるだけでしょ」
「違う。わたし、めちゃくちゃなんだよ。リスカやピアスだけじゃなくて、体がおかしくなった直接の原因はたぶん、睡眠導入剤とか大量に飲み続けてきたせいだし、摂食障害で、まともな食事が取れてなくて……」