死にたがりティーンエイジを忘れない
「同じクラスの、上田《うえだ》くん。わかる? えっと、放送委員で、まじめな放送も、お昼のDJみたいなこともやってて……
声、キレイだし、スポーツもできて、派手じゃないけど、人気あるの」
「上田って人ならわかる。一学期、同じ班だった。目が悪いから、いつも前のほうの席にしてる人だよね?」
「うん。上田くん、絵も上手で……それに、優しくて。声かけてくれるの。あたしにも、普通に。あたしも、どうにかしゃべれる。つっかえちゃうし、顔も赤くなって恥ずかしいけど」
そう、わたしも普通に話しかけられたことがある。
変わった人だと思った。
だから記憶に引っ掛かった。
一学期の半ば、午前中の授業が終わった後。
もうくたびれ切ったわたしが学校を抜け出そうとしたときだった。
職員室で担任に「帰ります」と告げて廊下に出ると、たまたま上田がそこにいた。
放送室は職員室のすぐ近くにある。
上田はわたしを呼び止めた。
「お疲れさま。ぼくも教室にずっといるのは疲れるから、何か、わかるよ。特に給食の時間はきついよね。
だから、昼の放送の当番を多めに入れてもらってる。当番だと、教室で食べずにすむから」
わたしは「そう」としか答えられなかった。
上田が同情するわけでも見下すわけでもなく、サラリとした口調でわたしの学校嫌いに同意したせいだ。
わたしはうろたえてしまった。
上田は「気を付けて帰って」とささやくように言って、放送室に入っていった。