死にたがりティーンエイジを忘れない


上田はうなずいたと思う。

わたしは上田の顔を見ていなかったから、ハッキリとはわからない。


「教室にいた女子、もう帰ったよ」

「そう」

「いじめ、だよね。ああいうのって。ぼくは今から美術室に行くから、フォローできるところはフォローしようかなって思う。お節介かもしれないけど」


上田にかばってもらったら、智絵は喜ぶんだろうか。

それとも、迷惑をかけると感じて、縮こまってしまうんだろうか。


「文化祭とか休み時間とか、なければいいのに。学校なんか、なければ」


思わず漏らした本音を途中で止めて、わたしは、上田の横を通り過ぎてその場を立ち去った。

上田の制服から、竹の削りカスの匂いがした。


自分の左手を見る。

右利きだから、そう不自由はない。

でも、何か大切なことができなくなった気がする。

何だっけ?


教室で帰り支度をしながら、何ができなくなったのか、ようやく思い至った。

左手が使えないと、ギターが弾けない。


「別に、いいか」


左手が無事だとしても、どうせ弾かないんだから。


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