死にたがりティーンエイジを忘れない
理科っておもしろいんだな、と単純に思った。
教科書や科学の本に書かれていることを再現したら、必ず同じ結果になる。
シンプルなその構図が新鮮に感じられた。
日常生活、学校生活は、そうはいかない。
似たような場面が、前回と同じ結果を招くとは限らない。
法則性なんて、あってないようなものだ。
智絵は、文化祭のプログラムの隅を指でなぞった。
「美術室は行ってみた?」
「うん」
「上田くんの絵、今年は何だった? 静物画がすごくうまいんだよね。去年のビー玉の絵、きれいだった。あたしが知ってるのは、美術室で描いてる途中のだけどね。今年も見たかったな」
わたしは、理科室以外どこにも行かないつもりだった。
でも、智絵が美術部の展示を見てほしいと言ったから、美術室にだけは行った。
「バラバラに割れたガラスの置物だったよ。もともとイルカの置物だったのかな。尖った破片の描き込みが、すごく迫力あった」
血のしずくが伝う破片がいくつかあった。
美術室で、思わず見入ってしまった。
そしたら、いつの間にか上田がそこにいて、きまりの悪そうな笑顔でわたしに絵の解説をした。
「うっかり割っちゃったときのやつだよ。掃除しようとして、指、切ったんだ。けっこう血が出て、でも、それが妙にきれいで。
とっさに写真に撮った。その写真をもとに描いたんだ。赤と黒はあんまり使ったことなかったんだけど、悪くないね」