シンデレラは騙されない


そろそろお店を出ようとしている時に、私のスマホに専務から電話が入った。
星矢君のために会長と専務の電話番号を登録していた。
もちろん、会長と専務も私の番号を知っている。

私は慌てて電話に出る。

「麻里ちゃん、今、お昼?」

「あ、はい、13時からだったので…」

私の慌てぶりに凛様は目を細めて私の様子を窺っている。

「もしかしてなんだけど、凛太朗君ってそこにいる?」

私は気持ちを落ち着けるために一回目を閉じた。
そして、動揺を隠しながら専務の質問に答える。

「はい、今、一緒にいます。
凛様が会社にお友達がいないので、一緒にランチをしています。
でも、もう、お店を出るところで…」

私がまだ話し終わらない内に、凛様がスマホを取り上げた。

「誰? 義兄さん?
今から戻ります。

あと、こんなくだらない用事で麻里に電話するのはやめてください」

私は目の前が真っ暗になる。
別に凛様とランチをする事は何も悪くないと思ってはいても…

凛様は電話を切った後、スマホを私に静かに渡した。



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