シンデレラは騙されない
すると、誰かが私の名前を呼んだ。
私が来た道を振り返ると、そこに佐々木さんが立っていた。
「佐々木さん、どうしたんですか?」
私はコンビニの方を見る勇気がなくて、佐々木さんの方をずっと見ていた。
すると、佐々木さんは、私が忘れていた物を手に持っている。
「麻木さん、慌ててたから、これ、忘れてて…
せっかく買ってきたやつだし、麻木さんの大好きな中華まんだからやっぱり食べてもらいたくて…」
私は胸が痛んだ。
せっかくお土産に買って来てくれたものを忘れてくるなんて…
「ごめんなさい…
すっかり忘れてました」
私はそう言って、すぐにその中華まんを受け取った。
「本当にありがとうございます。
夜にちゃんとチンしていただきますね」
佐々木さんはやっと微笑んでくれた。
「麻木さん、今度、食事でもどうですか?
また、二週間後に連絡します。
あ、でも、それまで待ってられないかも…
待てなかったら、会社に電話するかもしれない。
その時は、よろしく」