シンデレラは騙されない
私はうんともすんとも言わず、ただ微笑むだけ。
だって、遠くから蛇のような恐ろしい視線を感じて、体が固まって動かない。
早く佐々木さんに退散してもらいたくて、私はわざとらしく時計を見て時間がないふりをした。
「あ、そうか…
じゃ、俺はこれで帰るわ。
お疲れ様」
「お疲れ様でした」
私は丁寧に会釈をして、そして、手を振った。
佐々木さんが地下鉄に続く階段を下りて姿が見えなくなるまで、辛抱強く手を振り続けた。
やっと佐々木さんの姿が消えると、私は意を決して凛様の方へ振り返る。
凛様はコンビニの入口の縁石に座って、私を待っていた。
そんな凛様は目を細め明らかに不機嫌そうな顔をしている。
それなのに、私を見て無理やり笑った。
無理やりの笑顔は要らないです。
だって、目が笑ってなくて怖いんだもん…
「凛様、私、もう帰らなきゃ、7時に間に合わない」
凛様の言い分はとりあえず脇に置いといて、私は自分の都合を凛様に押し付ける。
だって、そのために、私は凛様の家に住まわせてもらっているのだから。