シンデレラは騙されない
平塚さんはそう言うと、テーブルの上に自分の名刺を置いた。
「僕の連絡先。
僕の事を思い出す事があったら、すぐに連絡してほしい」
私は受け取るかどうか躊躇していた。
でも、こういう流れの時は、とりあえず受け取る事が大人の対応なのだろう。
「あと、麻里ちゃんの連絡先も教えて」
平塚さんってきっとモテてきたに違いない。
凛様とはタイプが違うけれど、でも、全てにおいて自分に自信がある人。
平塚さんの落ち着いた低い声は、不思議と肩の力を抜きたくなる。
それでも、私は、連絡先を教える事も名刺を受け取る事にもまだ悩んでいた。
「麻里ちゃんが連絡先を教えてくれないと、また斉木家に電話する事になるけど、それでいい?」
「いいえ、それは…」
それは困る…
そして、平塚さんはそれをちゃんと分かってる。
私は平塚さんの名刺を受け取った。
「後で、こちらのアドレスに連絡します…」
私の言葉に平塚さんははっきりと首を横に振る。