シンデレラは騙されない


「今、教えて。
電話番号だけでいいから」

ここまではっきりと自分の思いを主張する人に、断る理由は思いつかない。
私が小さな声で電話番号を教えると、平塚さんは困ったように笑った。

「麻里ちゃんを困らすような事はしないよ。
でも、いつか、僕と友達で良かったって思える日が必ず来る。
だから、そんなガチガチにならなくても大丈夫だよ」

私はそんな平塚さんに笑顔を見せる。
今日はこんなに素敵なお店で、美味しい料理をご馳走になったんだもの、ちゃんと大人の対応をしなくちゃいけない。

私が席を立つと、さっきから何度も鳴ってるスマホのバイブの音が響き渡った。

「凛太朗君?」

私はスマホを見る事はせずに、分からないという顔をする。



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