シンデレラは騙されない


「よろしく伝えといて。

人と違った感性を持った彼は、幼い時から何だか苦しそうだった。
生まれた環境に何も疑問を抱かずに大人になるのが普通なのに、彼はその疑問に立ち向かって反抗して。
僕から言わせれば、ただの甘えにしか見えなかったけどね。

麻里ちゃんは彼にとって、待ち望んでいたキャラクターなんだろう。
生きる事に一生懸命で、真っ直ぐで、それでいて可愛くて…
自分とは真逆の人生を歩む麻里ちゃんが、きっと羨ましいのさ。

凛太朗君は、どんなにもがいても逃げ出しても、彼から地位と名声と富はなくならない。
それがどんなに素晴らしくて貴重なものなのか、もうそろそろ気付く年だと思うんだけど」

平塚さんの言葉には、少しだけ刺があった。
きっと、平塚さんは凛様の事をいい風に思っていない。

私は苦笑いをして、深々と頭を下げた。
これから先、平塚さんとの繋がりが想像以上に親密になる事を、この時は思いもしないで。



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