シンデレラは騙されない


モーリステイラーホテルを出ると、私は凛様に電話をした。
凛様から何度も入っていたメッセージは、まだ?の三文字ばかりで何だか泣きそうになる。

凛様は近くに居たらしく、ホテルから少し歩いた先にある交差点の前で私を拾った。

「ごめんね… 待ったよね」

凛様は助手席に座る私をしばらく見つめて、そして車を動かした。
車は首都高を抜け、横浜方面へ向かっている。
斉木家とは違う方向へ進む車は、まるで凛様の気持ちみたいで私は何も言えなかった。

「悠馬さんはどうだった?
優しくしてくれた?」

凛様の切ない気遣いに胸が痛くなる。

「…うん」

凛様は海が見える高台の公園に車を停めた。
時間帯が遅いせいか駐車場は空いている。

「ちょっと外に出よう。
俺、ずっと車にいたから、腰が痛くなった」

凛様はそう言って、右側の口角だけを上げて笑った。
車から出ると、背伸びをしたり自分流のストレッチをして私を笑わせる。



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