シンデレラは騙されない
そして、公園をしばら歩くと見晴らしのいいスペースに辿り着いた。
夜風が気持ちいい。
さっきまでのいざこざが嘘みたいに。
凛様は自分が着ていたジャケットをさりげなく私の肩に掛けた。
その物腰にいつもうっとりする。
平塚さんの言うように、私達凡人が真似したくてもできない凛様特有のアイデンティティ。
「ありがとう…」
凛様にとっては当たり前の振る舞いでも、私にとってはすごく嬉しかった。
今日も満月。
高台から見下ろせる街の夜景よりも、私達は夜空を見上げた。
空気が澄んでいるせいで星空が間近に見える。
私は空を見上げながら、腕を広げてクルクル回った。
このまま夜の空に吸い込まれたいと、投げやりな事を思いながら。
すると、凛様が私を抱き寄せた。
誰もいない事を確認して、更に強く抱きしめる。
「今日の麻里は本当に綺麗だ…」
「あの満月より?」
私は何だか楽しくて、凛様にそんな事を聞いてみる。
「もちろんだよ…
麻里以上に魅力的なものなんて、この世には存在しないよ」