シンデレラは騙されない
私は凛様の手のひらからその箱を受け取った。
そして、震える手でそっと開けてみる。
「………」
何も言葉が出て来ない。
満月を思わせる光輝くダイヤモンドに、凛様の私への想いが込められている。
「どう? 気に入った?」
凛様だって私の反応が気になるに違いないのに、生真面目は私の心は本心を隠す事だけを考えている。
何も言わない私の顔を凛様は心配そうに覗き込んだ。
「……麻里は、俺から離れなきゃって思ってる。
凛様のために、斉木家のために、私は身を引くべきだって…」
凛様は夜空仰いで、大きく息を吐いた。
そして、しばらく黙りこむ。
私の手の中にある綺麗なリングだけが、何も知らずに輝きを放っていた。
凛様は私の手からその箱を受け取ると中からリングを取り出し、私の左薬指にそっと付ける。
「俺の幸せは俺が決める。
これだけはわかってほしい。
俺のため、斉木家のためにって思うなら、絶対に俺から離れないで。
麻里が俺から離れない限り、俺は自分のために斉木家のために必死に頑張るよ。
だから、俺の言葉だけを信じて…
麻里を幸せにするのは、俺なんだからさ…」