シンデレラは騙されない
「あの時の君は本当に綺麗だった…
俺の記憶が間違いじゃなければだけど。
あの時、ジャックの隣で笑っていたのは、麻木麻里さんだよね?」
念入りに蓋をして、テープでぐるぐる巻きにして、私の心の一番奥にある引き出しにしまいこんだ私のキラキラした大切な思い出たち。
こんな形で呼び戻されるとは思わなかった。
でも、もう、私はあの時の私じゃない…
「星矢君、何を探してるの?」
私は凛様の質問にまともに答える気はなかった。
だって、秘密一つも持たない人間なんて、この世にいるはずはないから。
凛様達みたいな特別な人間はそうなのかもしれないけど…
「麻里先生、僕のクマのぬいぐるみを見なかった?」
「クマのぬいぐるみ?」
私は完全に凛様を置き去りにした。
凛様の私への疑問や懸念は、無視された言葉となって宙に浮いている。
「そう、凛太朗が買ってくれたクマのぬいぐるみがどこにもいないんだ。
お母様がこの部屋に忘れてきかもって言うから…」