シンデレラは騙されない
私は星矢君と一緒に部屋中を探して回る。
凛様の視線を痛いほど感じるけど、でも、だからといって、あの頃の話を笑って話す事なんて到底できない。
私は早くこの時間が過ぎて行く事だけを願っていた。
「星矢、そんだけ探してもないんだったら、もうこの部屋にはないんだよ」
星矢君は泣きそうな顔になる。
「星矢君、私がこの部屋をもう一度しっかり探してみるから。
だから、泣いちゃダメ…」
私はそう言いながら、星矢君の顔を優しく両手で包み込む。
星矢君は大きく鼻をすすると、私の目を見て笑顔で頷いてくれた。
「麻里先生、見つけたらすぐに僕に知らせてね」
私も笑顔で大きく頷く。
遠くに見える凛様の視線は気付かないふりをして。
「よし、星矢、行くぞ」
凛様のその言葉に、私は安堵のため息が漏れそうになる。
そして、何も聞かなかった素振りで、二人に手を振った。
……バタン。
閉じられたドアを茫然と見た。
今の私の状況が恥ずかしいわけじゃない。
弟とお母さんのためにお金を稼ぐ事は、自分で進んで決めた事。