シンデレラは騙されない

私がその棚の中を探してみると、確かに連絡先がたくさん書いているリストらしきものがある。

「でも、星矢君、勝手に先生が家の中にある物を見ちゃダメだと思うんだ。
星矢君は、凛様の携帯番号は聞いてないの?」

星矢君はガックリ肩を落とした。

「お母さまとお父様は、僕が勝手に凛太朗に電話をかけるのをダメって言うんだ。
だから、前に、凛太朗が内緒で僕に電話番号を教えてくれた時に、お父様達に見つからないように、クマのぬいぐるみの洋服のポケットにその紙を入れてて…」

可哀想な星矢君…
大きな目から涙がポロポロ落ちてくる。

「そのぬいぐるみはまだ見つからないの?」

星矢君は涙を拭いながら、大きく頷いた。

こんな時の私はどうすればいいのだろう。
でも、星矢君の気持ちを考えればどうにかしてあげたい。

「じゃ、先生は今から透明人間になります。
星矢君の目には先生は見えません」

そう言いながら、私はその連絡先リストのファイルを棚から下へ落とした。





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